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STORY

先駆移住者ストーリー

里山ビジネスの宝庫、それが市貝町のポテンシャル

市貝町で高齢者住宅を営む大根田さんは、東京で会社員として生活していました。「市貝町で生活するとは思っていなかった」と語った大根田さんの、移住したきっかけや移住してからのお話をお伺いしました。

大根田さん

里山ビジネスの宝庫、それが市貝町のポテンシャル

市貝町で高齢者住宅の経営を始めた理由を教えてください。

 11年前に父がデイサービスを始めたのがきっかけでした。当時、祖母が市貝町でひとり暮らしをしていたのですが、認知症を患い介護が必要になったんです。それなら市貝町で介護事業を開いてしまえばいい、ということに。私は長男ですし、いずれは市貝町で事業を継ぐのだろうと漠然と考えていました。
 しかし高齢者住宅を建てるにあたり、後継者問題のため20年勤めた東京の会社を辞めて一緒に働くことにしました。子どもが小学校に上がるタイミングでもあったので市貝町に家を建てて引っ越したのですが、約3年間は東京まで新幹線通勤をしていました。そして高齢者住宅がオープンした2016年1月からここで働き始めたんです。
 もし、高齢者住宅を経営するのが宇都宮市であったなら事業を継がなかったと思います。市貝町の環境や「田舎の入口」という距離感が気に入っていたので、移住を決意しました。

大根田さん

素人だからこそ実現できた理想の介護の追及

実際に高齢者住宅を経営していかがでしょうか。

 デイサービスをやっていると、重症化したご利用者様がある日突然来なくなってしまうことがあるんです。最期まで関わりを持てないことがさみしくて。そこで考えたのがどんな人でも入れる自由度の高い高齢者住宅でした。
 もし、私が雇われ店長の立場でしたら「自由」に対する責任を負うことはできなかったでしょう。私が経営している「市貝の里 なごみ」では、ご家族にリスクを説明のうえ責任をもって運営しています。私は介護に対しては全くの素人だったのですが、だからこそ自分の理想とする介護施設を追及できているのだと思います。

 自営業なので、介護だけでなく宣伝など幅広い仕事を自分でやらなければいけないのは大変です。また、今までの「お世話型」の介護に慣れた職員の意識を変えるよう努力しました。ここは他の施設とは根本的に考え方が違うので、今までの介護に対する考え方にとらわれず、入居者さんの「自由を優先させる」やり方を浸透させることに注力しています。

大根田さん

自然に生きて自然に寿命を全うする

大根田さんが理想とする介護とはどのようなものでしょうか。

 生活に関してはなるべく自由に楽しく過ごせる環境を提供することです。例えば、食事。何十年も好きなものを食べて生きてきたのに、入居したら食事が制限されるのはつらいでしょう。「市貝の里 なごみ」での食事は醤油をたくさんかけて食べてもいいし、カップラーメンを食べてもいい。正月には餅も食べます。ご家族にはちゃんと説明して、リスクを承知していただいています。
 また、何歳の人でも難病を持っている人でも受け入れて、可能な限り最期まで看取るようにしています。死を遠ざけてしまうのは良くない。ここでは最大20人を受け入れますが、ここで亡くなられた方は9人いらっしゃいます。一緒に暮らしていくうえで親しくなった方との面会も自由にしています。
 制約の多い苦しい環境の中で生きるよりも、自由な環境で過ごして欲しいと思っています。

大根田さん

プライベートの過ごし方を教えてください。

 休みは基本的に土曜日です。入居者の方の朝ごはんを用意してから夕飯を提供するまでの間、子どもたちと過ごします。日曜日は子どもたちが施設に来て、大画面のテレビでゲームをしたりお菓子を食べたり自由に遊んでいますね。子どもたちは、休日には出かけたい様子ですが(苦笑)
 ここら辺の人たちは、自然が豊かなのであえてアウトドアをしないようですし、市貝町の学校には子どもだけで自転車で学区外に出てはいけないという規則があります。子どもたちが田舎体験をする機会が少ないのは残念ですね。施設の外の側溝に沢蟹が住んでいるのですが、移動に制限があるので、「あそこにもっと大きい沢蟹がいるぜ」といって気軽に探索へ行くことができない。子どもたちの探求心が伸びないんです。
 せっかく「いい田舎」の環境があるのにもったいない、と感じています。

市貝町の田舎風景

市貝町の「田舎」には価値がある

市貝町の魅力を教えてください。

 続谷(※)の田園風景がとてもきれいなんです。ああいう所の空き家を買い取って、古民家民宿にしたら田舎リゾートとしてビジネス展開も可能なんじゃないでしょうか。リアルな農村体験を提供できそうです。例えば、宿泊者と地元の野菜を持ち寄って鍋パーティを開催したり、市貝町の元気な高齢者を派遣して地元料理を作ってもらったり。わざわざ食べに行かなくても地元の料理が食べられますし、元気な高齢者の働き口にもなります。
 地元の人は気づいていませんが、市貝町の日常は、都会の人や海外の人にとっては非常に面白く、価値のあることです。東京で育ち市貝町に移り住んだ私には、田舎ならではの「価値」を見いだす感覚が残っています。すべての人が「良い」と感じるのは難しいでしょうが、「田舎の価値」に共感できる人は多いと思いますよ。

※市貝町にある地名。田園風景が広がっている。

市貝町の田舎風景

市貝町の田舎体験を発信していきたい

 市貝町は日本昔話に出てくるような、「懐かしい田舎」の風景が魅力です。宇都宮からの距離感も良い。都会の人を招待して田舎体験を試してもらっても良いと思います。何回か開催すれば問題点もブラッシュアップできるんじゃないかな。そのうち口コミで良い評判が伝わっていくと思います。
 市貝町の内外の人に市貝町の魅力を発信していけたら……と考えているのですが、仕事が忙しいため企画を考えただけで止まってしまっています。でも、共感していただける仲間がいれば、協力して「面白いこと」を展開できそうです。そんな潜在力を秘めた町だと感じています。

 大根田さん、ありがとうございました。市貝町の「いい田舎」の魅力は、新たなビジネスへの可能性をも秘めていました。
 ちなみに、市貝町に移住を検討している方へのメッセージをお願いすると「思ったより寒いです」との答えが。真冬にはマイナス10℃にもなることもあるので「二重サッシにしたり、床暖房を付けると快適ですよ」とのことです。